0123 無条件の悲しみ

きみはひとり悲しみを胸に
ポツダム広場に立ち尽くす
誰もきみに気づくことなく
明日へと足早に去っていく
時の揺りかごで運命は眠り
静かに目覚めを待っている
影は天と地を裏返すように
きみを幻惑しようと試みる
ひとかけらの光も与えずに
憂いの形相に目隠しをする
けれどきみの細く靱な指は
暗闇の中でも迷うことなく
幾億もの願い事の破片から
たったひとつを拾い上げる
高い塔の上から見下すのは
ベルリンを徘徊する天使か
厚い壁を砕く巨人の亡霊か
天を仰ぎ見てその悲しみを
きみは無条件で受け入れた

0326 第3の拳

取り上げられたグラスには
3本目の腕が注がれていた
拍手と懐疑心は城跡の回廊
胸の奥深く闇を招き入れる
影を大地に落とすことなく
砂の外套で足音を覆い隠す
見えざる大波の創造主とて
大自然と語らう賢者達から
身を隠すのは容易ではない
波打つカーテンに揺れる影
それは他の誰の物でもなく
あなた自身が振り上げた拳
けれど高く翳した尊き剣の
柄を握り締めるは第3の拳

0626 稀薄な飴玉

それは短い沈黙の肩越しに
未来をユラユラと投影して
僕らの解析能力を検証する
燃え上がる雨と振向く階段
出口から侵入してきた瞼が
暗闇をゆっくりと撫で回す
びしょ濡れになったのか?
それとも駆け昇ったのか?
記憶は混沌の渦に呑込まれ
警笛を遥か彼方へ葬り去る
誰に放ったシグナルなのか
舌で残像を読み取るように
稀薄な飴玉をしゃぶり尽す
溶けて消える存在の中にも
鍵の陰影は落ちているもの
その味を忘れてはならない
この甘く儚いキャンディが
最後の一粒ではないかぎり

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